昔の研究内容 (1997-2002)


KEKでのBファクトリー実験(Belle)に参加していました。

Physics Analysis

B中間子系におけるCP非保存現象の研究をしていました。
主に、B->J/psi KL modeの解析を担当していましたが、解析できるすべてのdecay mode(J/psi KSを含む)を使った解析も行ないました。
最初の結果は Phys. Rev. Lett. 86, 2509 (Mar 19, 2001) に発表されました。
さらに、データを増やした結果が "Observation of Large CP violation in the Neutral B Meson System", Phys. Rev. Lett. 87, 091802 (Aug 14, 2001)に掲載されました。
この結果は、同じ巻に掲載されたBaBarの結果とともに、 発見以来30年以上K中間子系でしか観測されていなかったCP非保存現象が、B中間子系でも存在することを確立するものであり、大きな注目を集めました。

で、書いた博士論文がこれ(pdf)です。

余談ですが、この↓イベント(Belleで初めて両方のB中間子が全再構成されたイベント、よく見るとBがミキシングしているというおまけつき)を見つけてこのイベントディスプレイの絵を作ったのは私です。右側の絵(崩壊点付近の拡大図)の、D+の点線はイラストレータで引いたものであると何人知ってるでしょうか。他のトラックは、再構成プログラムで書かれたものですが。

SVD Ladder Assembly

SVD (Silicon Vertex Detector) の、検出器と読み出し部からなる Ladder と呼ばれる部分の組み立てを行いました。

実験開始前年の1998年4月〜9月ごろまで浜松ホトニクスに常駐して組み立ておよび動作試験を行いました。 (Belleからは私一人が出向していました) その結果、修士論文 "Design, Construction and Performance of Belle SVD"でめでたく修士課程を終えることができました。

その他、主にSVDのフロントエンドから読み出し系までを中心に、ハードウェアの仕事はいろいろやりました。
特に、1999年、2000年、2002年の3度の入れ替えではフロントエンドエレクトロニクスの動作試験担当として働きました。

シリコン検出器の放射線耐性 に関する研究

シリコン検出器の信号読み出しに使われるSMAASHチップやVA1チップ、およびシリコン検出器自身の放射線耐性に関する研究を行ないました。

最も長く関わったのがVA1チップの放射線耐性の研究です。 CMOS LSIでは、微小加工技術を使うことにより放射線損傷の原因となる酸化膜の厚みが薄くなることで、 放射線耐性が飛躍的に向上することが知られています。 初代のBelle SVDに使われていたVA1チップ(1.2μmプロセス)では、200 krad (radは放射線量を表す単位)の放射線でLSIが動作しなくなりました。 これは、実験初期の環境下では1年程度しか持たない性能でした。 しかも、加速器の性能を向上させていくと放射線量はさらに増えることが予想されていました。

そこで1.2μm→0.8μmにプロセスを変更したサンプルを作り、測定を行いました。 この改良版では1Mrad照射後の動作を確認しましたが、1.2Mrad照射後に動作しなくなりました。 このバージョンのVA1は、3代目のSVDから採用されSVDの寿命をのばすのに大きく貢献しました。

さらにその後、計画されていたSVDのバージョンアップのために、0.35μmプロセスを用いたVA1チップを制作しました。 測定の結果、 放射線耐性は20Mrad以上と、B-Factoryでは十分なレベルに達しました。
この成果については、2000年10月のIEEE Nuclear Science Symposium(@Lyon)で発表した他、IEEE Trans. Nucl. Sci. 48 (2001) 440 に掲載されました。

SVD software
SVD関係のソフトウェアの開発もしました。
主な仕事としては、

などがありました。 他にもちょこちょこと仕事(雑用?)をこなしていました。

Presentations


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